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2018年4月11日

   :レーシングカー・コンストラクター童夢/ある副産物
    ㈱童夢ホールディングス 林みのる氏より、「かなりおおげさだが」との評価のもと、「どうぞ」と掲載承認済み





みのる氏。日本で唯一のレーシングカー・コンストラクター、㈱童夢の創設者にして、レーシングカー・デザイナー。あまりにもセンセーショナルなデビューを飾ったスーパーカー 童夢- 零をつくった男といえば、幼少の記憶がまざまざと蘇る輩も多いはず。設立以来40年を超す同社の、イノベーティブで、同時に官能的で挑発的な、刺激的でエポックメーキングな社歴において、常にコアのマグマであり、フレアであった同氏。


   
   
   
 

 

モーターレーシングの世界では、まさに泣く子も黙るカリスマ的存在。その視点は:

レースは、レーシング・ドライバーの腕くらべではない。それは自動車の技術競争である


に集約され、同業のほとんどがたどらざるをえない論理的な帰結、「完成車メーカーの下請け」などではなく、常に純粋なレーシングカー製造社、コンストラクターとして唯一絶対の存在であり続ける。その軌跡と奇跡は当然しかるべき専門誌に譲るとして、ここではその「あまりにも偉大な副産物」だけを切り取ってとりあげる。



 

空機産業こそが日本の製造業にとっての重要キーワード、という論は、現状スローガンに留まり、言葉が独り歩きしている感がある。CNC同時五軸制御によるアルミニウム、チタンの受託切削加工が代表例。他に駆動系、油圧系。。。だが、ジェットエンジンは海外メーカー製の特定モデルによる寡占を頂点とした請負構造であることに加え、そのほとんどが金属加工という従来技術の延長にあり、その事業構造のもと、パイを奪い合うそこにあるのは突き詰めればつまりはコスト競争によるサバイバルだ。本来、このキーワードにこめられた本質的メッセージは、従来通り、いつものコスト競争に持ち込もう、という意思はまったくなく、むしろその逆であったにもかかわらずだ。



夢カーボン・マジック(現 ㈱東レ・カーボン・マジック)は、童夢・林氏のレーシングカー・コンストラクターという「無から有をつくりだす」創造力と行動力と、ルーレットの同じ目を10回当てつづけるほどの冒険の過程で必然的に、ただし「事業環境の分析」などといった経営判断とは、まったく「真逆の」、教科書とは無縁の意思によって設立され、図らずも副次的な単独事業として大成功を収めている。現在では航空機業界へのカーボン・コンポジット製品の成形に留まらない、構造設計の経験とノウハウを評価され、同業界で高度な部品の開発に関与する「世界レベルで、航空機業界において純粋に技術的付加価値を認められる会社」だ。

 
 
 



在、業界に蔓延する航空機産業イコール「CNC同時五軸制御加工」技術志向。それは一つの方向性ではあるだろう。しかし、「航空機製造業界への参入」が、大きな果実を期待してのことであれば、そのためには、他社とは異なる視点、マインドセット、そして賭け。もし、「賭け」という単語をきらうのであれば、ツキを呼ぶ仕掛け造りが必要、と同氏の「成功実績」が示している。それはいったいどのように完成していったのだろうか。

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